コロナの蔓延で長期の休校が続くなかで浮上したのが、「9月入学」構想だった。しかし、来秋からの導入は見送りに。これにより、“逆転”の難を逃れた人がいる。
仮に導入されていれば、「4月生まれの子」が勝ち組から負け組に転じる可能性があったのだ。
どういうことか。移行の際には、学校が9月から始まるのに新1年生は「4月1日時点で満6歳の子供」というズレが生じる。解消する方法が複数議論されていたが、そのうちのひとつが、「5年かけて段階的に解消する」という案だった。
本来、「入学前年の4月2日から翌年4月1日に満6歳になる子」が1学年のところを、導入した年は「前年4月2日から翌年5月1日までに満6歳を迎える子」が新1年生、次の年は「前年5月2日から翌年6月1日までに満6歳に……」といった具合に、学年幅を「13か月」にしていくのだ。
だがその場合、導入初年は、同じ学年のなかで“最年長”になるはずだった4月生まれの子が、逆に“最年少”になってしまうケースが出てくる。教育評論家の石川幸夫氏が言う。
「小学1年生くらいだと、『同学年』といっても、4月生まれと3月生まれでは体の大きさにも、認知能力にも差があります。とくに体の大きさは差がわかりやすく、いじめにつながるなどの心配もあります。私の息子も同じ学年のなかで“年少”にあたる早生まれだったので、入学後は勉強の理解や周囲とのコミュニケーションで差を感じました」
お受験で有利になるために計画的に4~6月の出産を目指す親もいるくらいだ。来年に小学校に上がる子を持つ30代女性は「せっかく夫と協力して4月生まれの子をもうけたのに、仮に9月入学になっていたら、お受験の計画がすべてパァになるところでした」と安堵の表情で語った。
※週刊ポスト2020年6月12・19日号