新型コロナウイルスの影響で、全国の祭りが中止を余儀なくされている。「3密」が避けられないことから、例年7月から8月にかけて行なわれる京都・祇園祭の山鉾巡行、大阪の天神祭、青森ねぶた祭、高知県のよさこい祭などの大規模な祭りは軒並み中止。神事のみ執り行われるところが多く、併せて夏の風物詩でもある花火大会の中止も多く発表されている。
各地域に根付いた祭りには、そこに参加することを生き甲斐にしている“お祭り男”も存在するが、彼らの胸中はいかばかりだろうか。話を聞いてみた。
福岡県で介護施設職員として働く40代男性・Aさんは、夏に開催される祭りのために毎年1週間の有給休暇をとるのが常だったが、今年はコロナで中止となったことで、通常出勤に。しかし、仕事には身が入らないという。
「5月に、町内のお偉いさんから『安政6年のコレラ流行以来、初めて中止になった』と聞かされたときは、本当に茫然としました。元々地元の祭りは、“疫病退散”と“無病息災”の祈願が目的。往生際が悪いと思いつつ『コロナは疫病。ウチの町だけでも、曳車を出せないか』と粘ったのですが『馬鹿か』と怒られてしまい……。
その日は1人で大酒をくらい、町内の若い人たちに1人ずつ電話して悲しみを分かちあいました。祭りが予定されていた時期はもともと連休ですが、このご時世どこに行く気にもなれず、仕事にもやる気が起きないでいます」(Aさん)
京都府で会社を経営する30代の男性・Bさんも、毎年担いでいる神輿が中止になり、落胆の日々を送っている。祭りの中止による“損失”は、さまざまだという。
「私はもちろんのこと、お囃子を担当する子どもたちも、がっかりしています。通常なら彼らは1か月前から和楽器の特訓を受けることになり、学校や習い事とも違う人間関係が作れる貴重な機会。楽しみにしていただけに、正直かわいそうですね。また、例年だと京都には全国から神輿、山車といった文化財の金箔加工や漆塗の発注がありますが、それも少ないようで、祭りの中止は職人さんにとっても大打撃ではないでしょうか」(Bさん)