病気で手術を選択すると必ず入院がセットとなり、その分の費用がかさむと考えている人は多い。だが入院費を抑えるには、「日帰り手術」という手もある。東京外科クリニック理事長の大橋直樹医師が説明する。
「欧米の先進国では、ある程度の安全性の高さが立証されている部位の手術は日帰りが当たり前ですが、国民皆保険の日本は医療へのコスト意識が低く、空きベッドを好まない病院側の経営事情なども相まって、日帰り手術が普及していません」
オペしたその日に退院する日帰り手術は体への影響が懸念されるが、近年は医療技術の進歩により安全性が増したという。
「実は日帰り手術のポイントとなるのは“麻酔の効果”です。近年は麻薬性鎮痛薬や筋弛緩薬などが発達し、腹腔鏡手術という高度な医療が日帰りでできるようになりました」(前出・大橋氏)
実際に日帰り手術が可能な疾患は、鼠径ヘルニアや胆石、胆のうポリープ、虫垂炎、下肢静脈瘤や痔などになる。
たとえば鼠径ヘルニアの日帰り手術をする場合、最初の診察で問診や血液検査、心電図検査などを行なう。2度目の通院で1時間ほどの腹腔鏡手術を行ない、手術室を出てからおよそ1時間後には帰宅できる。
手術費用はどうなるか。病院に5日間入院して鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術をする場合、手術費約23万円に麻酔代や入院費がプラスされて、総額約55万円(3割負担で約17万円)だ。
一方、日帰り手術をする場合は入院費がカットされ、総額約40万円(同約12万円)となる。入院する場合とのコスト差は3割負担で約5万円に達する(別掲図参照)。