がんの治療は手術が第一選択肢となるケースが多いが、他の治療法が選ばれるケースもある。
「ごく初期の胃がんや大腸がんは、胃カメラや大腸カメラで腫瘍を切り取る内視鏡治療で済むケースが多い。この治療法なら入院日数が少なく、体への負担も軽いので患者は非常に楽です。
また食道がんは放射線がよく効くがんで、抗がん剤と放射線との併用で手術せずに済むこともあります。ただし、腫瘍が十分に小さくならない場合は結局手術が必要になる。また、放射線治療を行なうと組織がダメージを受け、手術の難度が上がる可能性があります。手術で取り切れるなら、最初から手術に踏み切るほうが適しているケースが少なくありません」(前出・山本氏)
放射線治療はトータルで40万~60万円(同12万~18万円)ほどかかる。抗がん剤治療も決して安価ではなく、がん治療においては手術代がかからないから安くなるわけではない。
保険適用外である先進医療を選択する場合はさらに高額になる。
粒子線を患部に当ててがん細胞を死滅させる「陽子線治療」や「重粒子線治療」は、300万円ほどの費用が全額自己負担となる(別掲表B参照)。また遠方の患者は交通費や宿泊費の負担も増す。
ただし「保険外併用療養費制度」により、先進医療の治療以外の検査や診療などの費用には保険が適用される。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏が指摘する。
「その他に注目すべきは、近年になりそれまで自由診療だったロボット手術の保険適用の幅が一気に広がり、がんによっては保険が適用されるようになりました。また先進医療特約が付いている民間保険に加入していれば、先進医療の技術料がまるまるカバーされるうえ、交通費や一時金が出ることがあります」