一方、消費の回復は弱い。5月は▲2.8%減で、4月と比べ4.7ポイント改善しているとはいえ、依然としてマイナス成長である。2019年の最も低い伸び率は4月、10月に記録した7.2%であり、今年5月の伸び率は遠く及ばない。消費の回復はままならない。
北京の外出制限が消費に影響か
今後の見通しだが、足元でリスク要因が出てきた。それは、北京市での新型コロナウイルス感染「第二波」到来の懸念である。北京市では暫く新たな感染者が発生していなかったが、6月11日に西城区で発生して以来、14日24時までに市全域で79人の感染者が発生した。これから患者が爆発的に増えてしまい、1月の武漢市のようになったら、中国経済は再び大きな調整に見舞われるだろう。
ただ、現地の状況を聞く限りでは、今のところその可能性は低いとみられる。北京市の対応は迅速で、周到のようだ。14日の時点で、区によっては、マンション小区単位での外出制限が始まっている。驚いたのは、この措置が全国レベルで徹底されていることだ。
長春市の知人からの話だが、15日の朝の時点で、マンションの掲示板に、「5月30日以降に北京市から戻ってきた住人は、14日間の自宅待機、3回のPCR検査が義務付けられる。ごまかしたり、従わなかった場合は、法に基づいて厳罰に処される」といった内容の張り紙が張られているという。
北京市では「健康宝」という健康証明システムが使われている。外出する際、人民はスマホを携帯しなければならず、銀行、他のマンション小区など(三里トンなど場所によっては商業施設でも必要となる)を訪れる際は、健康宝アプリを立ち上げ、それをかざし、アプリ上に現れる二次元バーコードを読み込ませなければならない。システムは過去の移動履歴から感染者と接触していなかったかをチェックし、PCR検査結果、体温測定結果を確認し、問題がなければ、自分の顔写真のすぐ下に、「異常はみられません」といった表示が出てくる。異常が分かった時点で、システム側から通知があり、適切で、迅速な対応が行われる。
既に、こうしたシステムが出来上がっていて、厳しく運用されているので、1月の武漢市の状況とは随分と異なる。全国各地で稼働する同様なシステムが機能したことで、新型コロナウイルスを短期間で封じ込めることができたと考えられる。北京市において、第二波が拡大する可能性は低いのではないだろうか。