新型コロナウイルスが流行する中で、あらためて注目を集めているのが、東京一極集中型社会のリスクだ。満員電車や繁華街での“密集”は、他の地方都市とは一線を画している。
6月1~5日の通勤時間帯のJR山手線の利用者数は、感染拡大前(2月初旬)の56%まで戻っている。同じく主要駅の利用者は、新宿駅が49%、渋谷駅47%、東京駅44%と前年比の半分ほどになっているものの、かなり増えた。だが、緊急事態宣言中から、3密の状況下での通勤や勤務を強いられている人々がいることを忘れてはならない。
ホームレスなどの社会的弱者への支援活動をしているNPO法人「ほっとプラス」理事で社会福祉士の藤田孝典さんはこんな指摘をする。
「医療やインフラなど社会を支えるうえで必要不可欠な業種で働く人を『エッセンシャルワーカー』と呼びます。このほか、介護や製造業、コールセンター、タクシー運転手なども、“3密”の職場でありながらテレワークするわけにもいかず、休めない」
彼らは緊急事態宣言下でも電車に乗り、不安を抱えつつ人混みの中、出勤しなければならなかった。
「だったら、東京を出て地方に行けばいいのに」──そう思うのであれば、それはあまりにも偏った“東京モン”の考え方だ。藤田さんが続ける。
「同じ仕事でも、地方と東京では倍くらい収入が違うこともある。最低賃金で比較しても、東京都(1013円)と、その隣県である山梨県(837円)とを比べると、176円も違いがあります。もし、東京でも地方でも同じ賃金と社会保障が受けられる仕組みができれば、東京に留まる理由はなくなるかもしれません」