一方、地方の魅力といえば、「“3密”が少なく感染の不安が少ない」「頼ることができる両親や親戚がいれば子育てなどがしやすく働きやすい」「第一次産業など、社会的変化に影響されにくい仕事がある」「自治体等の子育て支援が充実している」など、東京では得難い多くのメリットを列挙できる。
たとえ東京で働くほどの収入が得られずとも、地方の実家に身を寄せれば、家賃もかからず、車もすでに所有していることが多い。もし親族が許すのであれば、予想される“第2波”の前に、田舎に帰っておくという選択肢もあるかもしれない。
もはや“東京にしかないモノ・体験”などわずか。目指すべきは、日本全国どこにいても、東京と地方、両方のメリットを享受できる「分散型社会」だ。とはいえ、こんな意見もある。NPO法人「ほっとプラス」理事で社会福祉士の藤田孝典さんが言う。
「地域密着の仕事も多く、地方と東京との賃金格差は残るはず。完全に“東京は不要”になるとは言い切れない」
東京女子大学教授(情報社会心理学)の橋元良明さんは、順応性の観点からこんなことを話す。
「田舎に住みたいという都会人は少なからずいますが、特有の濃密すぎる人間関係が息苦しくて戻ってくる人も相当数出るでしょう。また、文化的イベントや美術館などに触れたくなり、そのために東京へ戻る人も少なくないはず」
単に“東京一極集中”を解消すればいいわけではなく、テレワークを活用して柔軟に働ける環境と価値観を整えたり、賃金格差を解消したり、東京と地方で連携し、双方が歩み寄る柔軟な社会=地方分散型社会になるのが理想というわけだ。
ピンチをチャンスに変え、私たちの社会を持続させるための転換点とできるか。
7月5日の都知事選を前に、“ポストコロナ”“ウィズ・コロナ”を取り上げ、さまざまなマニフェストが声高に叫ばれている。しかし、見据えるべきなのは、この小さな首都の未来だけでいいのだろうか。いま、東京だけでなく、日本全体が試されている。
※女性セブン2020年7月2日号