新型コロナウイルス禍によってテレワーク社会へと半ば強制的にシフトした日本。今後、オフィス以外で働くスタイルが根付くのか、ビジネスパーソンにとって当たり前の働き方にするために何が必要か。テレワークの事情に詳しい、テレワークマネジメント代表取締役・田澤由利氏に聞いた。
――今回のコロナウイルス禍を契機に多くの企業がテレワークを導入しました。
田澤:政府によって緊急事態宣言が出され、出勤の7~8割抑制が要請された結果、日本は国全体がテレワークの実証実験の場になりました。今日本はテレワークが根付くかどうかの岐路に立っています。企業は急な対応に迫られましたが、「テレワークはやっぱり大変」と失敗体験とするか、「やってみたら意外とできた」と成功体験とするかで道は2つに分かれます。成功体験を得た企業が多くを占めれば日本の働き方は変わります。一方、失敗体験で終わった企業は元に戻ってしまうでしょう。
――働く側もテレワークの成功体験を得ることが必要ですね。
田澤:今、テレワークをせざるを得ない人の中には、機材も満足に揃えられない、会社に行って仲間と会いたいと感じている人もいるでしょう。しかし多くの人は「毎日会社に行かなくても大丈夫かも」と気付いたはずです。テレワークによって通勤時間がなくなることは知識として理解していましたが、それを実際に体験できたのです。「オフィス勤務が正当で、テレワークは仕方がない時だけ」という考え方は改めるべきです。
会社にいるのと同じコミュニケーションを
――インターネットにつながっているノートPCやスマホがあればテレワークは可能です。
田澤:テレワークとはICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方。テレワークでも会社と同じように働くことができる仕組みをつくることが定着のカギです。
私はよく「テレワークだと時間管理はどうする?」「勤務評価はどうする?」といった助言を求められますが、オフィス勤務とテレワークを分けて考えると仕組みを2つ用意しなければなりません。この壁を一気になくすことは難しいので、ICTを活用し、まずは会社にいるのと同じようなコミュニケーションを実現することから始めるのが良いでしょう。ここで成功体験を得ることができれば、「会社と同じように働く」段階、次の「評価と給与体系を会社と同じにする」段階へとステップアップすることが可能です。