「コロナ手当」で手取りアップも
そうした中で、意外にもコロナ禍の中で手取りが増えた社員もいた。伊藤忠商事の30代社員が言う。
「海外出張が原則禁止となり出張手当はなくなりましたが、国内での残業が増えたので給料は減りませんでした。それだけでなく、会社から“コロナ奨励金”(正式名称は「特別慰労一時金」)が支給され、役職によりますが私は20万円を受け取れることになりました。ボーナスは昨年の成績と連動なのでコロナの影響はなく、奨励金のぶん手取りが増えました」
テレワークによって給料が上がったケースもあった。リクルートキャリアの20代社員が語る。
「対面で行なっていた面談業務がすべてオンラインになって、仕事の効率が悪くなり、そのぶん深夜まで働くことが多くなった。うちの会社は自粛期間も残業代が出たので、収入は以前より1割ほど増えました」
ここまでは現役サラリーマンの事例を見てきたが、定年後に再雇用で働く社員の給料はどう変化したのか。
精密機械などを製造する大手メーカーで再雇用された60代社員がこう打ち明ける。
「再雇用の条件は、勤務時間や日数が少なくなるぶん、基本給が定年時の5~6割になることでした。コロナ流行以前は、本職の営業の手伝いに加え、製造部門を手伝うかたちで働き、残業したぶんの残業代はもらっていた。ところが、テレワークで状況は大きく変わった。基本給は満額もらっていますが、残業が全くなくなりました。
これまでは元部下や後輩たちが再雇用で給料が減った私に気を遣い、週に何回か残業を回してくれていた。しかし、今は緊急出勤や残業の必要があるときは、給料を補填させるために正社員を駆り出している。再雇用の我々にはそういう配慮が一切ありません」
“給料緊急事態”での手取り額は、同じ業界や会社でも、部署や年齢によって大きく異なるだけに、社内でも「同僚の収入がどうなったか」は正確に把握できないようだ。悲喜こもごもの“生の声”から、各企業の実情が見えてくる。
※週刊ポスト2020年7月10・17日号