通勤時間がなくなる、自宅で介護が必要でも会社をやめる必要がなくなる……など、働く側にとってはさまざまなメリットが指摘されているが、一方で導入する企業側にとっては、どのようなメリットがあるのか。
そもそも、企業のリスク管理手法のひとつであるBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)の観点から、テレワークの導入は非常に重要なものとなる。地震や台風などの災害時、ウイルス感染症蔓延時などの非常時でも、業務をストップさせずに済むからだ。
一方、働き方改革実現の観点からも有効で、育児や介護、病気療養などを行っている従業員に対して働ける環境を確保することは、離職防止や人材確保に役立つ。生産性向上や業務の効率化も期待できる。オフィスで業務をしていると予定外の打ち合わせや会議などで業務を中断されることもあるが、テレワークであればそのようなわずらわしさもなく業務に集中することができるからだ。
もっとも、そうしたメリットがあることはわかっていながらも、中小企業経営者の中には「テレワークはIT企業や先進的な取り組みに積極的な大手企業のものであり、中小企業には縁遠い」と考えている人も少なくない。だが、中小企業だからこそ、テレワーク導入は大きなメリットになり得る。
中小企業にとって悩ましい課題のひとつが人材の確保だ。例えば女性の人材。内閣府の最新の調査によれば、第一子の出産を機に退職する割合は46.9%となっている。せっかく仕事を覚え業務の1から10まで知り尽くした人材が、仕事を続ける意欲が高いにもかかわらず、テレワークの制度がないことを理由に退職するようでは、中小企業にとって大きな損失。テレワークは中小企業が人材をつなぎ止める方法としても有効なものと言える。