トランプ政権による対中強硬策が続いている。トランプ大統領は8月6日、動画投稿アプリ・TikTok(ティックトック)と通信アプリ・微信(ウィーチャット)がアメリカの国家安全の脅威となるとして、45日経過以降、アメリカ人、企業による使用を禁止するといった内容の行政命令に署名した。
ポンペオ国務長官はその前日(5日)に記者会見を開き、アメリカの通信、アプリケーション、クラウド、ケーブルなどの事業に関して、中国企業の関与を防ぐ措置を採る方針を示した。
5月には、華為技術(ファーウェイ)に対する輸出規制を強化。同時に、中国のハイテク企業、政府機関、大学など33の企業・機関を事実上の禁輸対象企業リストであるエンティティ・リストに新たに加えた。
新型コロナウイルスを封じ込めることができない中でも、アメリカの対中強硬策は実施されてきたが、中国が香港国家安全維持法を成立させたことで7月以降、米中対立は激化した感が強い。
微信を運営するテンセントはもちろんのこと、TikTokを運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)も、ファーウェイをはじめ大半のハイテク企業についても、収益の柱は中国国内事業だ。禁輸の影響はあるだろうが、代替や様々な対策によって、影響は軽減できるだろう。少なくとも、マクロ経済の観点からみれば、すぐに経済成長率に影響が出るような話ではない。
ただ長期的な視野に立てば、米中対立による影響は非常に大きい。1990年代以降世界経済を発展させてきた大きな成長の仕組みが変質しかねないからだ。
中国は1992年、トウ小平の南巡講話を契機に、海外企業への開放を急速に進めた。沿岸地域を中心に中国が積極的な外資誘致を行ったのをきっかけに、欧米、日本、韓国、台湾など工業化の進んだ国の企業が中国を生産拠点として、輸入先として一斉に利用し始めた。