インターネットの急速な普及、部品のモジュール化などの生産技術の進歩も加わり、世界全体で自由化、国際化の波(グローバリゼーション)が起こり、世界が大きな一つの循環(サイクル)を形作ることで、世界全体の経済規模を大きく拡大させるのに成功した。
そうした動きは、2001年12月に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟したことで一層加速した。しかし、この“グローバリゼーション”による発展方式が今や、経年劣化を起こしているようにも見える。
世界全体が恩恵を受けてはきたのは確かだが、相対的にみれば中国における恩恵がずば抜けている。それは経済成長率の推移を比較すれば一目瞭然だ。今後も同じ状況が続くとすれば、他国はこの状況を容認できるだろうか。
アメリカ国内では金融をはじめ、中国を製造基地として、需要先として上手く利用したグローバル企業が巨額の利益を得た。欧米でも、日本でも、広く薄くではあるが、消費者は安い商品を買うことができるようになったという恩恵を受けた。しかし、安価な中国製品に駆逐されて倒産に追い込まれた企業も多い。
“グローバリゼーション”は様々な面で不均衡を引き起こしている。そうした点を考慮すれば、この先、米国の政権が変わったとしても、米中の対立、デカップリングは不可逆的な動きになりそうだ。
米中対立が日本経済にとっての大きなリスクに
こうした情勢の変化を受けて、中国は経済成長の方式を変え始めた。7月30日に開かれた中央政治局会議において、今後の経済発展方式についてひとつのモデルが示された。それが“国内大循環”である。そこでは以下のような説明がなされた。
“新型コロナが外部環境の変化を過激にしている。足元のチャンスとチャレンジにおいて、いずれも新しい発展変化があることを中央の指導層は明確にした。我が国(中国)が遭遇している非常に多くの問題が中長期的なものであり、持久戦の角度を認識に加えなければならない。国内の大循環を主体として、国内、国際の二つの循環を相互に促進する新たな発展局面の形成を加速する”──。