国内大循環とは、“生産、分配、流通、消費といった各セグメントのつながりをスムーズにかつ強くすることで、巨大市場中国の優位性を発揮させ、国内の需要を満足させることを以てして経済発展の出発点とし、立脚点とする”といった意味である。
日本人の中には親米派、嫌中派が多く、アメリカの優勢、中国の劣勢を予想する世論が強いように思える。しかし、それは日本にとって不利な結果につながりかねない。
日中貿易は日本側の恒常的な黒字である。中国は日本の輸入先のトップであり、中国から幅広い製品を安く購入することで日本経済は回っている。それに伴い、苦境に陥る企業もあるが、マクロで評価すれば、それ以上に中国への輸出や直接投資で利益を上げる企業が数多くあるということだ。
もし、中国が対外貿易に消極的になったとしたら日本はどうなるか。日本の消費者は物価高に悩まされ、日本の企業は輸出の不振、投資収益の縮小から、業績悪化に悩まされる。
幸い中国は、鎖国をしようなどといっているわけではない。双循環といった表現で、国内の循環を主体としつつも、国際的な循環も発展させている。しかし、そうはいっても今後は、“国内大循環”を重視する政策がより多く出てくるはずだ。
アメリカや欧州、アセアン諸国が中国との間にできた減少分を埋めてくれれば都合がよいが、そう簡単ではない。米中間の対立は日本経済にとって厄介な問題だ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。