熾烈な競合関係にあった2社が一緒になる――大企業同士の合併には大きなインパクトがある。8月16日に英紙『ファイナンシャル・タイムズ』(電子版)が報じた「日産とホンダ」という日本を代表する自動車メーカーに“合併案”が存在したとの一報も、関係者に大きな衝撃を与えた。振り返れば、各業界に“破談”となった「幻の合併」が存在する。
大型合併には、様々な思惑が交錯する。ハードルが高いぶん、実現した時のインパクトは大きい。過去の例を振り返っても、もし実現していれば……と想像を巡らせたくなる“幻の合併案件”があった。
“一番モルツ”があったかも?
その最たる例のひとつが2009年に浮上したキリンとサントリーの経営統合案だ。同年7月13日に日経新聞が両社の経営統合交渉を一面トップでスクープ。
「第一報を聞いた時は耳を疑いました。両社は競合するライバルというだけでなく、会社の成り立ちも社風も全く違う。キリンが三菱グループの官僚的な組織なのに対し、サントリーは“やってみなはれ”の精神が看板で、しかも佐治・鳥井家がオーナーの非上場企業。さすがに誤報だと思った」(業界関係者)
だが、両社の経営陣が交渉中だと認める。そこから、“実現したら社名はどうなる”“ビールの主力商品は「一番搾り」か「モルツ」か”といった話題で、一気に日本中の注目を集めていく。経済ジャーナリスト・永井隆氏が解説する。
「総合飲料メーカーとして大手の両社ですが、国内市場は縮小の一途。統合によって国内で圧倒的なポジションを築き、世界に打って出るというシナリオでした。実現していれば、その動きは内需中心の業界である食品、流通、日用品などに波及し、大手同士が次々と手を組んで世界を目指す動きにつながった可能性がある」
だが、結局は両社の統合比率で合意に至らず、交渉は破談に終わった。
「サントリー側は、キリン1対サントリー0.9の統合を主張し、キリン側はキリン1対サントリー0.5を提案。合意に至らなかった」(同前)