国際市場では、人民元安が急速に進むのではないかといった懸念が強まっているようだが、それは杞憂であろう。6月末の外貨準備高を見ると増勢に転じている。資金流出懸念が後退しているからだ。
現状、中国の経常収支の黒字額は世界でトップクラスである。2014年はドイツの2903億2700万ドルに続き、2098億1900万ドルで世界第2位である。また、2015年は3306億ドルで、前年比57.6%増である。
今年に入ってからの状況は分からないが、サービスに比べてウエートの大きな財(モノ)の動きについて、1~5月の貿易収支をみると、2175億ドルに達しており、速報ベースで比較すれば前年同期比0.1%増である。
少なくとも貿易、経常収支段階の数字を見る限り、人民元には売り圧力ではなく、強い買い圧力が加わっている。
もっとも、問題がないわけではない。統計で把握できない形での資金流出が巨額に及ぶといった問題が発生している。
2015年の国際収支を見ると、資本、金融勘定は▲1424億ドルに過ぎず、誤差脱漏が▲1882億ドルも発生している。分かり易く言えば、財・サービス貿易で3306億ドルを稼いだのだが、資本・金融面での積み増しは1424億ドルに過ぎず、当局が把握できない1882億ドルもの資金が流出していたのである。