この事業は1千億円の累損を出し、4年で破綻する。当初からビジネスに成算はなかったとされるが、その後、ドコモは事実上の損失補填として、プラチナバンドの割り当てを受ける。しかし、放送業界とその親会社の新聞社は、この巨額損失事件をほとんど報じなかった。
本書は、経営面でも、幕府への忠誠を誓う武士道精神と忖度を行動指針とする茶坊主精神が、通信業界をダメにしたと主張する。本書の一番の見どころだ。通信業界の企業研究にとどまらず、日本経済低迷の本質に迫る経営書としても、秀逸だ。
※週刊ポスト2020年9月18・25日号