「運動会で手をつないでゴール」は必要かも?
こうした研究結果に不安になるのは、やはり早生まれの子供をもつ親だろう。『偏差値29の私が東大に合格した超独学勉強法』(角川SSC新書)著者の杉山奈津子さんは、2月28日生まれの息子を育てる親としてこう語る。
「現在息子は小学1年生です。小1の段階では、早生まれと遅生まれで、幼稚園の年少さんと小2くらいの差があるように感じます。息子が幼稚園のとき、1kmのマラソン大会があったのですが、走るのが遅い息子にとって後々のコンプレックスにならないか心配でした。『運動会で手をつないでゴールさせる』という近年の小学校の配慮について、以前は意味のない行いだと思っていましたが、成長差を見ていると10才くらいまでは必要なのかもしれないと考えるようになりました」
杉山さんは、早生まれの息子がほかの子より出遅れていることで落ち込まないよう、最大限の注意をしながら子育てと向き合っている。
「『あの子はできるのに、なんでできないの』という叱り方は厳禁。『早生まれなんだから遅れていて当然』と認識して、まずは挑戦したことをほめる。親が失敗を叱ると、チャレンジするのをやめて、ますます成長が遅れる恐れがあります」(杉山さん)
この意見に、教育評論家の親野智可等さんも同意する。
「最もまずいのは『うちの子は3月生まれだからダメだ』と親が思い込むことです。そういう否定的な考えは子供に伝わり、実際にそうなってしまう可能性を高めます。親に限らず、教員も同じです。
教育現場にいた実感としては、子供の成長は中学生以上になると、生まれた時期よりも個人の性格の差がはるかに影響してくる。山口教授も提言されていますが、非認知能力(*)に目を向けることはとても重要です。お茶の水女子大学の内田伸子名誉教授の研究でも、難関大学に合格した子たちは幼少期にたっぷり遊んでいたというデータがあります」
【*認知能力とは、IQテストや学力テストなどで測る「頭のよさ」を指し、一方の非認知能力とは、「最後までやり抜く力」や「自制心」「他人といい関係を築く力」など、社会性、情緒、内面の能力を指す。近年の研究で、社会的に成功する人は非認知能力が高いことがわかってきている】