今、私たちが生きている「超高齢社会」では、年金や医療などの社会保障費の財源確保が厳しくなっている。そのため多くの人が、「いずれ医療費や老後のお金を自分で賄う時代が来るだろう」と意識し始めている。だからこそ節約と貯蓄に励むのだろうが、厚生労働省の統計を見ると、貯蓄すべき時期も変わりつつあることが分かる。金融ジャーナリストの鈴木雅光さんが解説する。
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40~50代半ばの知人に、貯蓄について話を聞いてみると、子供の教育費、住宅ローンなどでなかなか貯蓄にまでお金が回らないという声をよく聞く。定年後も、雇用延長や再雇用で長く働いて、少しでも老後資金を作ろうと考えている人が多いようだ。
老後資金のための貯蓄の時期を考えるうえで、厚生労働省が作成している「賃金構造基本統計調査」が参考になるかもしれない。これは、年齢別、男女別、都道府県別、企業規模別、業種別に平均賃金を調べたもの。これによると、たとえ長く働いてお金を稼いだとしても、よほど節約に励まない限り老後資金は作れないかも知れない、という厳しい現実を目の当たりにするはずだ。
「令和元年賃金構造基本統計調査」をわかりやすくまとめたGD Freakの推計によると、「全産業」で、従業員1000人以上の会社に勤める人の年代別平均年収は、20~24才以下で348.8万円。その後30~34才以下で530.5万円、40~44才以下で645.1万円とどんどん上昇し、50~54才以下で756.4万円とピークを付ける。だが、55~59才以下で731.1万円と若干ダウンした後は下がり続け、60~64才以下になると473.2万円まで減少する。つまり、雇用延長や再雇用に該当する60~64才以下で稼げるお金は、ピーク時の約60%にしかならないのだ。ちなみにこの数字は全平均値のため、都道府県別や男女別は考慮されていない。
産業別でも見てみよう。「製造業」で従業員1000人以上の会社に勤める人の平均年収は、20~24才以下で374.5万円、40~44才以下で685.3万円、50~54才以下で824.6万円と、前述の全産業と比べると高めだが、55~59才では813.4万円と若干下がり、60~64才以下になると455.1万円と、雇用延長してもピーク時の55%程度しかもらえないことになる。