遺族年金は、被保険者の死亡による減収への収入補填が目的のため、受給できるのは、故人に生計を維持されていた遺族に限られる。
遺族厚生年金の場合、妻、子、孫、55歳以上の夫、父母、祖父母が受給対象になる。受給額は、夫の厚生年金受給額の4分の3だ。
定年まで勤め上げて65歳から老齢年金を受給していた夫が亡くなり、妻は専業主婦、子はすでに独立しているケースで考えてみよう(別掲図1参照)。
夫の年金が約198万円(基礎年金約78万円+厚生年金約120万円)の場合、妻は自分の老齢基礎年金に加えて、夫の厚生年金の4分の3(約90万円)が遺族厚生年金として上乗せされ、合計で年約168万円を死ぬまで受給できる。夫婦の時より総額は減るが、妻の老齢基礎年金だけよりはだいぶ手厚い。
注意すべきは、遺族厚生年金の請求には時効があり、死亡した日から「5年以内」に請求しないと、1円ももらえないことだ。
請求するには、夫と妻の年金手帳、夫の年金証書、夫婦の戸籍謄本などの必要書類を揃えて、年金事務所や年金相談センターなどで手続きする。
一方、遺族厚生年金とは別に遺族基礎年金という制度もある。これは国民年金に加入していた故人に生計を維持されていた遺族が支給対象になる。
遺族厚生年金との大きな違いは、18歳未満の子のいる配偶者または子しか受け取れないことだ。支給額は「78万1700円+子の加算」となる。「子が2人までは各約22万5000円が、3人目以降は各7万5000円が加算されます」(前出・星川氏)
子は18歳の3月31日になったら受給権利を失うことになる。ただし、子のいない妻でも夫が年金受給前なら最高32万円の死亡一時金や、妻が60~64歳の間に年間約58万円の寡婦年金がもらえる可能性があるので取り逃さないようにしたい。
死亡一時金は夫の死後2年以内、寡婦年金は死後5年以内に年金事務所で手続きをしないともらえなくなる。
※週刊ポスト2020年10月9日号