あなたは責任があると考えながらも、治療費全額負担には疑問があるようです。もし子供が犬に向かって棒を振り回すなどの吠えられる原因を作ったようなことがあれば、その子供の過失による減額、いわゆる過失相殺が主張できるでしょう。
小学校低学年は通常の場合、責任能力(行動の結果の責任を理解する能力)はなく、不法行為責任を負いません。しかし、過失相殺は損害の公平な負担を図るための制度ですから、能力の程度は物事の道理をわきまえる程度で足りると考えられています。
低学年でも犬をからかうと反撃される程度の認識はあると思われるので、事故発生の経過によっては過失相殺される可能性があります。事故の状況を説明して保護者と協議するのがよいと思います。
飼い犬が人を噛んだり、とびかかってけがをさせた場合には、被害者の自招行為といえるような場合を除いて、飼い主の損害賠償責任は免れません。
こうした場合に備えたいのが保険です。自動車保険などで個人賠償責任の特約を付けておくと保険で賄うことができます。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2020年10月22日号