本人の言葉で伝わり納得感が生まれる
このように「紙の遺言」だけでは、相続が“争続”となるケースが多発。そこで最近は、付言を“ビデオレター化”する人が増えているという。家族への感謝や、遺産分割の理由を自分の言葉で説明した動画を撮り「遺言ビデオレター」とするものだ。相続ポータルサイト「いい相続」の村林学さんが言う。
「遺言書の付言でもビデオレターでも法的拘束力がないことには変わりありません。ですが、動画であれば本人の表情が見え、感謝の気持ちが効果的に届けられるでしょう。さらに、遺産分割の理由も亡くなった本人の肉声で説明できるため、遺族には納得感が生まれる。誰かが唆したという疑惑も消え、揉め事も減ることが期待されます」
例えば、“多くの時間を割いて自分の介護をしてくれたから”と、娘に自宅と土地を相続させることを伝える。“家業である農業の経営を継いでもらいたいから”と、長男に全財産を渡すことを伝える。“生前贈与をしたので、遺産分割の配分を少なくした”と、次男には預金のみの分与であることを伝える──そのように、遺産分割の背景を丁寧に説明することが、揉めない相続の第一歩になる。
また、“家族に負担をかけたくないから、葬儀や告別式は行わないでほしい”と相続以外のことも伝えれば、自分の死後、遺族は手続きを円滑に進めることができるだろう。
では、どのように作ればよいのか。遺言書のようにルールがあるわけではなく、遺産分割の理由が説明できればよいという。
「おすすめは、紙の遺言書とセットで作り、DVDなどに保存して一緒に保管しておくことです。動画そのものは1人で、スマホでも撮影できます」(福田さん・以下同)
遺言書を書く過程を撮っておくだけでも、自分の意思で書いた証明になるだろう。少なくとも「誰かに唆されたのでは」という疑念は消せる。失敗してもすぐに撮り直せるので、すぐにでもケータイ動画でいいから残しておきたいものだ。
「家族の法定相続分はいくらなのか、遺留分がいくらなのかなどを理解してから撮影することをおすすめします。できれば、事前に専門家に相談してください」
※女性セブン2020年10月22日号