だが、現在は制度的にも「生涯住宅ローンを払う」ことが人生のスタンダードになってきている。この10年ほどで銀行は相次いで完済上限年齢を「80歳未満」に引き上げ、現在はソニー銀行のように「85歳未満」まで住宅ローンを組むことができる金融機関も現われた。返済期間も延び、住宅金融支援機構や民間金融機関の「フラット50」など最長50年のローンが登場した。
男性の平均寿命は約81歳。「85歳ローン」は“死ぬまで借金を返し続ける”に等しい。ましてや「50年ローン」は成人後の人生の大半をそれに費やすことになる。ファイナンシャルリサーチ代表の深野康彦氏が指摘する。
「不動産会社は“返せるかどうか”ではなく、“借りられるかどうか”で物件を勧める。そうして高い家を買えば、老後も借金が残るという現実を見なければならない。私に寄せられた相談例でも、60代までに住宅ローンを払い終える人は少数派で、70歳超えは当たり前。これまでの常識に捕らわれずに、年金生活と借金生活を両立させることを考えていく時代です」
※週刊ポスト2020年10月30日号