コロナ禍に苦しむ企業が多い中、好調なのが「ごきぶりホイホイ」や「アースノーマット」で知られるアース製薬だ。2014年に当時42歳の若さでトップに大抜擢された川端克宜社長(49)に業績アップの秘訣を訊いた。
──このシリーズではまず、平成元年(1989年)当時を伺っています。
川端:当時は高校生で、自動車販売店でのアルバイトに精を出していました。納車の際、お客様へのプレゼントにシャンパンを持っていくような時代でしたから、10代ながらもバブルの雰囲気は感じ取っていましたね。
その後、大学に進み、就職活動ではアパレル企業から2、3社内定をもらいました。お洒落や身だしなみに気を遣える格好いいオヤジになりたいというくらいの単純な志望動機で(笑い)。
転機になったのは、当時付き合っていた女性の自宅で、彼女のお父さんと話したことでした。アパレル企業に就職すると伝えると、途端に機嫌を損ねてしまったんです。「浮ついたヤツだ」と思われてしまったのかもしれません。
彼女とのこともあったし、その反応が気になって、就職活動をやり直したんです。大学の就職課には「内定が出ているのになぜ?」と訝しがられました。
就職活動の時期も終盤で、企業を選んでいる時間はない。就職課にある求人票をアイウエオ順に見ていって、最初のほうにあったのがアース製薬。冗談みたいですが、本当の話です。当時の彼女とはしばらくして別れてしまいましたが(笑い)。
切り口を変えるだけで売れ始める
──きっかけはともかく、アース製薬入社後は敏腕営業マンとして名を馳せたそうですね。
川端:それなりに結果は出しました。自分が設定したノルマに届かなかったことは一度もありません。担当になったエリアのお客様とは土日もないくらいとことんお付き合いしていましたから、ノルマ達成が微妙になると誰かが助けてくれた。
「働き方改革」が叫ばれる今とは時代が違うと言われてしまいそうですが、やはり営業の第一歩はお客様との人間関係を地道に築いていくこと。その大切さを肌で感じた日々でした。