「どうせ生涯現役を目指すなら、定年後は社会貢献できるボランティア活動に携わりたい」――そう考える人が増えている。社会との繋がりを持ち、やりがい・生きがいを得ることは健康面や精神衛生上も望ましい。その意味でボランティア活動は、比較的、生活に余裕のある人にとっての“理想の老後”にも思える。
だが、時に60代以降の人生を大きく狂わせることもあるという。都内の町会役員を務める男性(71)が語る。
「私はある程度の蓄えもあったので、65歳の定年を機に地元町会でボランティア活動を始めました。内容は祭りの手伝いや町のパトロール、清掃など多岐にわたりましたが、同世代の友達も増えて充実感があった。
ただ、台風など災害時には避難所の設置に駆り出されるし、町会の運動会に孫と一緒に参加したくても、準備や運営に追われそれどころではない。町会費の集金で家庭訪問すると、イヤミを言われることもある。町会は付き合いも多く、のんびりできる時間がなくなってしまった」
ボランティア活動は「できることを、できる時に、できる人が」の精神が大切だが、自身の犠牲を強いられる場面が少なくないという。
とくに、地域密着型のボランティア活動は担い手が少なく、高齢化が進んでいるため負担も大きい。慢性的な人手不足のため、「活動をやめたくてもやめられない」という声も聞こえた。高い志を持って活動を始めた責任感の強い人ほど、自分を追い込んでしまう傾向が強いようだ。
犯罪者や非行少年の更生を支える保護司の男性(68)も表情は暗い。
「10年ほど前から保護司をしているが、正直、精神的にも体力的にも限界に近付いてきたと感じています。仮出所や保護観察中の対象者の面談は、基本的に彼らの都合に合わせ土日が多い。保護司の自宅で行なわれることもあるが、目を離した隙に金品を盗まれたという仲間もいた。対象者が事件を起こすと昼夜を問わず警察に呼び出されるし、一体、誰のために身を犠牲にしているのか……と空しく感じてしまうことがあります」