シーツを使って遺体を搬送
家族だけの手作り葬に、金銭面のほかにもメリットを感じた人もいる。10月に父を亡くした、近藤千春さん(仮名・63才)だ。
「父はボートレース場の近くに一戸建てを購入したほどの、ボートレース愛好家でした。入院中も“家に帰りたい”“レースの音が聞きたい”と口にしていたので、医師に“もう長くない”と告げられたときから、亡くなった後は自宅に安置してあげたいと考え始めました。コロナの影響で葬式をしっかりできる状況でもなかったので、通夜や告別式を行わない“直葬”でもいいのではないかと思ったんです。そのことを父に伝えると、父も“それがいい”“自分は読経も戒名もいらない”とのことでした。家族だけで葬儀の準備をすることに決めました」
遠くに住む父のきょうだいたちも、「自分も年で葬儀には行けないから、全部任せる」と言ってくれたという。
亡くなってからは、予定通り父の遺体を近藤さんの車で搬送して自宅に安置した。
「火葬までの間、父が大好きな自分の家で一緒に過ごすことができてよかったと思います。棺には父が大好きだったボートレースの予想紙や、孫やひ孫の写真、たくさんの花を一緒に入れました。“告別式もしないなんて、寂しすぎない?”という近所の人もいましたが、その一方で、“みんなで準備して、最後もゆっくり家族だけの時間がある。私もこういう送られ方がいいな”なんて言ってくれる人もいました。父も満足してくれたのではないかと思っています」(近藤さん)
※女性セブン2020年11月19日号