企業概要
コーセル(6905)は、計測器や分析機器、表示器、アミューズメント機器、チップマウンター、半導体製造装置、その他一般産業機器などに搭載される産業機械・工作機械向けの電源装置を主力とする企業です。
電源には、顧客ニーズに合わせて設計する「カスタム電源」と、カタログ販売する汎用的な「標準電源」の2種類があります。カスタム電源はAV機器など大量生産される民生品に使われ、標準電源は多品種少量生産される産業機械に使われます。
同社はカタログ品を販売する標準電源だけを取り扱っており、推定約500億円とされる市場規模の約35%を獲得。世界では約2500億円のうち約7%のシェアを獲得しています。
以前は同社もカスタム電源を取り扱っていましたが、カスタム電源は、設計力はあるが技術者不足で顧客社内で手が回らないという理由で外注することが多く、安く買い叩かれやすいという性質を持ち、大量受注が期待できる反面利益率が低くなることから取り扱いをやめたと言います。一方、半導体製造装置や医療機器といった産業機器に搭載される標準電源は出荷数量は少なくなりますが、利益率が高く、その筋で独自のノウハウ・技術を蓄積している同社にとっては舵切りして正解だったようです。
一方、同社が手掛ける標準電源は、プリント基板上に複雑な回路を形成し、部品を搭載してつくられています。多いものなら数百点にも及ぶ部品を搭載した回路では、「ノイズ」や「熱」が生まれ、機能障害などトラブルの原因となります。標準電源は、基板上に汎用電子部品を並べて作ることから「アナログの塊」と言われますが、実際そうしたトラブルは設計段階では想定できず、その設計は職人の経験値がものをいう世界。だいたいアナログ設計ができるようになるまで20年はかかるそうです。また、産業機械の安全性を左右する電源には様々な法規制が絡んでいることも、外注の理由の一つとなっています。
技術者に加え、同社では、電磁界シミュレーションや熱流体シミュレーションなどの設計技術、製造工程で用いられる材料技術、生産技術として蓄積しています。この標準電源に最適化した製造技術によって少量多品種の電源を効率よく製造することができるのです。
これがカスタム電源とは異なるところで、顧客となるメーカーでは内製化が難しく、安く買い叩かれることのない高利益なビジネスとなっています。
注目ポイント
足元の業績は好調。コロナ感染拡大を見越した先行発注による受注残が機動力となったほか、コスト管理による生産性向上が奏功して、大幅増益を達成しました。設備投資が控えられていた半導体製造装置セクターでも受注が回復しているほか、呼吸医療機器や検査装置需要の高まり、また5Gインフラ需要など、事業環境が好転しています。受注残高も大幅拡大しており、見通しは明るいです。
中期経営計画(~2023年5月期)では、最終目標として、売上高300億円(2020年5月期238億6500万円)、営業利益45億円(同16億6800万円)、営業利益率15%以上(同7.0%)が掲げられています。米中貿易摩擦という懸念材料はありますが、デジタル化を背景とした半導体需要増や5G移行による通信インフラ需要拡大といった波を上手くとらえられれば、2018年5月期~2019年5月期の業績は取り戻せると見ています。
また、財務状況ですが、技術力や信用力の高さを武器とした採算性の高いビジネスを行うことが出来ていることから、財務状況も優秀です。自己資本比率は90.4%で有利子負債はありません。また現金等に83億保有しており、非常に安定性の高い事業基盤を持っていると言えます。
なお、今期の配当金は3.0円減となる17.0円とする方針となっていますが、足元の好調が維持できれば増額される可能性あると思います。ちなみに現在の配当利回りは1.65%です。
株価は出来高急増と株価急騰後も1000円台で推移しています。PERは28倍となりましたが、見通しの良さや堅固な事業基盤を持っていること、またPBRが1倍を切っていることなどを考慮すると、堅調な株価推移が期待できるのではないかと思います。
【PROFILE】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。