政府では児童手当の削減(月5000円の『特例給付』の廃止)が議論されるなど、子育て環境は先行き不透明。家計が厳しいという理由で、子育てに専念できず働かなければならないという人もいるだろう。そんななか求められるのがベビーシッター。少子化が叫ばれる一方で、ベビーシッターへの需要は高まりつつあると言えるのだ。では、もしもベビーシッターを事業として開業するならば、何か必要な手続きや資格はあるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
自分が住んでいる地域で、子育てをしているお母さんのためにお子さんを預かるベビーシッターの仕事をしたいと思っています。私は子育ての経験はありますが、保育士の資格はありません。もしも需要が多ければ、きちんとした仕事として考えていきたいのですが、開業するために必要な資格や届け出はあるのでしょうか。(長野県、55才・主婦)
【回答】
事業として行うベビーシッターは、児童福祉法の適用を受けます。5人以下の乳幼児をベビーシッターの自宅などで預かって保育する事業を「家庭的保育事業」といい、乳幼児の家に出向いて保育するのを「居宅訪問型保育事業」といいます。どちらにせよこれらの事業では、「家庭的保育者」による保育が行われなければなりません。
この家庭的保育者とは、「市町村で行う研修を修了し、保育士又は保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村長が認める者」とされています。保育士は保育学を履修した大卒者や保育士試験を合格した者に与えられる資格です。しかし、「保育士と同等程度の知識と経験」と認められれば、保育士でなくても家庭的保育者になることができます。
その代わり、必要な研修の範囲や時間は、保育士より多くなります。研修は、自治体が民間業者などに委託して行っています。例えば東京都では、東京都福祉保健財団が研修を実施していますが、ホームページによると、保育士の資格がない人を対象に、保育の知識や技術の習得を目的として7日間延べ40時間の講義を予定しています。