「主婦をしているというと、最近、肩身が狭い気がする」。そんな女性が増えている。その違和感の原因は、社会に押し寄せる「分断」の波にあるのではないか──最新著『上級国民/下級国民』が話題の作家・橘玲さんが、専業主婦を取り巻く環境の変化について考察する。
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振り返れば、平成の30年間で、女性の貧困化が急速に進みました。バブル崩壊で不況になると、中高年男性の雇用を守るために、若者と女性が犠牲になったのです。
特に20代の女性が非正規で働く割合は、1997年の11%から2007年の22%まで倍増。夫の給料だけでは食べていけなくなった専業主婦が働かざるを得なくなったからだとされますが、女性の正社員比率は半数以下で、多くは派遣や契約社員、パートなどの身分のままです。
女性の社会進出に伴って離婚率も上昇。3組に1組が離婚するとされるなか、厚労省によると、婚姻件数や出生率が大きく減少する一方、母子世帯数は1988年度から2011年度の約20年間で1.5倍に増えました。それにもかかわらず、日本では別れた夫が養育費を払わないことが常態化していて、2012年の母子家庭の相対的貧困率は54.6%と先進国で最悪レベルです。日本の女性は離婚して母子家庭になった途端、社会の最貧困層に突き落とされてしまうのです。
「夫はサラリーマン、妻は専業主婦」という、昭和的な総中流社会は、もはや完全に崩壊しました。
「専業主婦は楽でいい」とされたのははるか昔で、現実には、夫の収入だけでは家族が食べてはいけず、パートでもなんでも、妻が働かざるを得ません。夫の方もいっぱいいっぱいで、「女は家事・育児だけやっていればいい」と考える男性は少なくなっています。