それに加えて、必ず言い残しておいてもらわないと困るのが、先祖代々伝わるお墓についてだ。
「“夫が亡くなって、いまあるお墓をどうするべきかわからない”という相談を受けることが非常に多いのです。たとえば、遠方の実家にお墓があるなら、その近くに住む親戚に引き継いでもらう、近場の墓地に改葬する、墓じまいしてお寺に守ってもらう、など、さまざまな選択肢がある。名義人である夫が生きているうちに判断してもらうべきです」
夫の死後、やむを得ず妻が判断すると、場合によっては後から理不尽にも親戚の反発を招くこともありうる。また、地方の墓地は寺社の敷地ではない場所にあることも少なくない。そもそも菩提寺がどこなのか、お寺とどういった関係があり、どんなご供養をお願いしているのかなど、夫しか知らない情報は、互いがしっかり話し合えるうちに共有しておきたい。
とはいえ、「あなたが死んだときのために教えて」とは、なかなか言い出しづらいのが当たり前。「縁起でもない」とへそを曲げて、とりつく島もなくなっては大変だ。そうならないためには、まず妻の方から「やってみせる」という手もある。
「“一緒にやりましょう”という雰囲気にもっていく。妻が“自分の終活を始める”というスタンスで誘うのです。たとえば“終活セミナーにつきあって”と頼むほか、“将来、あの土地はどうしよう”“私が認知症になったらどうする?”などと持ちかけて、きっかけをつくってみましょう。何気ない感じで“私も遺言書を書いておこうかしら”と言うのも有効。妻の終活を見て“おれも書こうかな”となる夫は少なくありません」
まずは妻から行動すべし、というわけだ。
※女性セブン2020年11月26日号