高齢化か進む日本社会。高齢の子が親を介護する「老々介護」も社会問題となっている。そうしたなかで、いまは老親を支える立場だが、近い将来来る自分の高齢期を意識しているという人も少なくないだろう。中年仲間が集まれば、「年を取ったらみんなで一緒に住まない? きっと楽しいよ!」などという話に花が咲く──。夢物語のようで、結構リアルな願望だ。
誰もが抱く孤独への不安。そんな思いが原動力となり、高齢者同士で助け合いながら前向きに暮らそうという理念のもと、発展してきたのがグループリビングだ。年を取ったら“自宅か施設か”の二択ではなく、もう1つの暮らし方がある。グループリビング運営協議会理事の土井原奈津江さんに聞いた。
介護や生活支援は個別に行政から購入
グループリビングは個人用の居室と共同生活空間で構成される住宅で、地域資源や介護サービスなどを利用しながら、高齢者が安心できる、自立した暮らしを目指す住まい方だ。独居高齢者が急増する超高齢社会の新たな暮らし方として注目されている。
「大きな特徴は、10人程度の他人同士が一緒に住み、主体的に生活を作っていくこと。居室のプライバシーは確保しつつ、リビング・食堂・浴室などの共用部が大きく造られ、家事や団らんで居住者同士がほどよく生活をシェアできる仕組みになっています。また地域交流がしやすい環境になっているのも特徴です。介護が必要な場合は地域の介護事業所などから自分に必要なケアやサービスを購入して使う。認知症でも共同生活に支障がない限り暮らせます」
このような高齢者の小規模共同居住が見られるようになったのは1980年頃から。初めは長年勤め上げた看護師仲間、教会のシスターたちなど、親しい者同士が老後を共に暮らすという形だった。1990年代に入ると、市民グループなどが地道に試行錯誤を続け、共同生活が盛んな北欧などの先進事例も参考に他人同士が暮らす取り組みが始まった。1999年に神奈川県藤沢市で開設したCOCO湘南台はそのシンボル的存在。上野千鶴子さんのベストセラー『おひとりさまの老後』の中で紹介されたことでも話題になった。
「COCO湘南台は、藤沢市会議員を24年務めた西條節子さん(92才)が70才のときに創立。まず高齢者問題の研究会を立ち上げ、さまざまな観点から練り上げて作ったグループリビングです。“核家族時代、老後の支援に家族は当てにできない”“高齢者に対する国や自治体のサポートも期待できない”“特養は待機者多数で、生活に自己選択の余地がない”“介護施設や病院を転々としながら老いたくない” など、高齢者の切実な問題提起を受け、地域の中で普通の暮らしを継続でき、生涯型の住まいを目指して開発したのです」
グループリビングはいまのところ制度化されておらず、運営主体や入居条件、費用、生活のルールなども幅広いバリエーションがあるが、COCO湘南台のコンセプトに賛同し、これを手本とするグループリビングが全国に16か所。グループリビング運営協議会の公式サイトで検索できる。