家族や親友とも違う関係で人生がさらに豊かに
COCO湘南台ほか系列のグループリビングの生活を聞いてみると、居住者同士が一緒に過ごす時間は多くなく、関係もあっさりしたもの。
「起床時間は皆さんバラバラ、日中もデイサービスに行ったり趣味に没頭したり、仕事に出掛ける人も。なので、朝・昼の食事は各自で。夜だけ食卓を居住者みんなで囲みます。入浴は時間を決めて順番に。安全のためにバスメイトと呼ばれる2人1組で入る仕組みもありますが、こだわって1人で入る人、ヘルパーさんに介助してもらいながら入る人、いろいろです。
居室の掃除や洗濯は各自で、共用部分の掃除はスタッフが行いますが、カーテンの開け閉め、夜の戸締りチェック、花の水やりなど生活の細々したルールはみんなで決める。ここがグループリビングならでは。介護施設のように受け身ではなく自ら生活に参加するので、居住者同士もつかず離れずの緩やかな関係を保とうとするよう。家族や親密な友達とも違う、このほどよい距離感がひとりではない安心感と、自由を謳歌する生きがいにもつながるようです」
おそらく高齢の入居者にとっては初めて経験する “新たなつながり” だろう。入居当初は戸惑う人も多いが、入居希望者の中には、地域交流などの場で実際の居住者の生き生きした様子を見たことがきっかけだという人も。自宅や介護施設ではなかなか難しい自立心と心地よい隣人とのつながりが人生を豊かにするのかもしれない。
【教えてくれた人】
グループリビング運営協議会 理事・土井原奈津江さん/慶応義塾大学政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(学術)。慶応義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。慶応義塾大学SFC研究所上席所員。NPO法人COCO湘南・グループリビング川崎の理事も務める。
取材・文/斉藤直子
※女性セブン2020年12月3日号