中国経済は全体では着実に回復しているが、消費の戻りだけが弱い。10月の月次統計をみると、生産(鉱工業生産)は6.9%増で、2019年の月次データと比較すれば、上から2番目に高い伸び率だ。
投資(固定資産投資・累計)は1.8%増。水準は低いがこれは1~10月までの累計の伸び率であるからで、月次で推計し直すと10月は12.2%増となり、2015年3月以来の高い伸び率となる。
輸出(人民元ベース)は7.6%増で、昨年1年間の伸び率である5.0%増を超えている。ドル高が進む中での高い伸び率だ。新型コロナウイルスのパンデミックが収束しない中、世界は厳しい経済環境に置かれているが、それでも中国製品には構造的に根強い需要があるようだ。
一方、消費だけが冴えない。10月の消費(小売売上高)は4.3%増に留まっている。2020年を振り返ってみると、1、2月に▲20.5%減に落ち込むと、7月までマイナスが続いた。そこからは3か月間プラスが続いているが戻りは弱い。10月は前月と比べ1ポイント高いとはいえ、市場コンセンサスよりも▲0.7ポイント低く、昨年までの過去最低の伸び率よりも、2.9ポイント低い水準にある。
消費はもともと変化の小さな統計であり、所得と消費者マインドぐらいにしか影響を受けない統計でもある。今回の新型コロナ禍を通じて“三密”の重要性を強く認識した消費者はマインドを委縮させている。中国においても、これを解きほぐすのは容易ではない。
こうした経済情勢の中で11月18日、国務院常務会議が開かれ、消費刺激に的を絞った政策が打ち出された。
ポイントは2点ある。一つは消費の活性化、もう一つはとりわけ厳しい状況に置かれている旅行業界に対する発展強化策である。
まず、消費の活性化について。具体的には、自動車、家電家具内装、レストランの3業種が選ばれている。
自動車に関しては、農村地区に住む住民に対して、仕事に使う3.5トン以下のトラック、1600cc以下の排気量の乗用車の購入を支援することであり、現在の排ガス規制に合わなくなった自動車に対する買い替えを促進するための補助金支給であり、また自動車需要そのものを高めるような駐車場、充電スタンドなどの設備強化である。焦点は都市部ではなく、農村部にあてられている。