南関東3県の有効求人倍率を見ると…
ただし、もし東京の求人減だけが人口流出の原因であるならば、新型コロナが収束すれば、再び東京一極集中に戻るはずである。だが、事態はそう単純ではないと見ている。
2020年9月に東京都から他の道府県へ転出した人口は、全部で3万644人だった。その転出先の内訳は、多い順に神奈川県7389人、埼玉県5918人、千葉県4393人と続き、南関東3県を合わせると6割弱を占める。
しかし、南関東3県の有効求人倍率を見ると、神奈川の9月の有効求人倍率は0.87倍と東京都を下回り、全国2番目の低さとなっている。また、埼玉県と千葉県も全国を下回る低水準となっているのだ。
雇用機会だけが人口移動の原因と考えるなら、東京都と同様に雇用機会が減少している南関東3県に、多くの人口が移動している事実を説明できない。私は、やはり新型コロナウイルスの感染拡大を機に、東京に見切りをつける人が増えているのではないかと見ている。
東京圏の通勤電車の混雑率の低下度合いから見ると、現時点でもおよそ3割の人がリモートワークを続けていると思われる。リモートで仕事が済むのであれば、様々な生活コストの高い東京に住み続ける必要はなくなる。
ただし、仕事の大半はリモートでできるという人でも、週に何回かは東京のオフィスに顔を出す必要があることが多い。そうした事情を考えると、さほど大きな時間とコストをかけずに東京に出向くことができる南関東3県に住めば、住居費のコストを抑えつつ、東京ほどの感染リスクを負わずに済むわけだ。そう考える人が増えてきているのではなかろうか。その場合、仕事を変える必要はないので、南関東3県の有効求人倍率が低くても全く問題はないのだ。
東京の不動産業者の間で、郊外の時代は完全に終わったといわれて久しい。都心に近い駅の徒歩10分以内でなければ資産価値はないといわれており、実際、郊外の住宅価格は、東京都心部と比べたら桁違いの安値に据え置かれたままだ。
私は、今後も郊外の地価が上昇に転ずるとは考えていない。郊外の地価が本来の価格であって、東京都心の地価が高過ぎるのだ。だから、今後の焦点は、東京都心の不動産バブルがいつ弾けるか、ではないだろうか。