いまなお猛威を振るう新型コロナウイルスだが、感染者の多い東京と、感染者が少ない地方とではいくらかの温度差もあるようだ。女性セブンのアラ還ライター“オバ記者”こと野原広子は、地方の病院でそんな温度差を実感した。「東京人の憂鬱」をテーマにレポートする。
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「東京にお住まいのかたは、病棟に入るのを遠慮してください」
茨城に住む92才の母親が座骨神経痛で立ち上がれなくなり、救急車で緊急入院することになった。入院手続きを終え、病室で寝ている母親に声をかけようとしたところ、ナースステーションでそう声をかけられ、足止めされた。
「これから見舞いに来ないで、ってこと?」と聞くと、「ええ、東京のかたはちょっと……」だって。コロナ禍のため、とは言われなくてもわかる。
そういえば、病院に提出した書類の中に家族の系図と続柄を書く欄があり、なんの気なしに自分の現住所を書き込んだ。田舎の病院も経営が大変なんだろう。取りっぱぐれのないよう、親族の住所まで書かせるのね、などとぼんやり考えはしたけれど、まさか「東京都××区」の住所の私がターゲットだったとは!
さらに、お見舞いや面会は1家族1人だけで、平日午後の2時間に限られているという。仕方なく、母親の見舞いは、茨城に住む弟(52才)が仕事を早引けしたり、半休を取ってすることになった。が、同じ県内とはいえ、病院に行くのに片道3時間かかるという。寝る間もない。「病気にならなきゃいいけど」と、弟の妻は心配するけど、どうにもならない。病院側もコロナ禍から患者と病院スタッフを守るのに必死なのよね。それはわかる。だけど見舞う家族もまたギリギリの思いを強いられる。
茨城だけじゃない。地方の病院はどこもかしこも、「東京人はコロナ感染予備軍」と決めつけているみたい。10月半ばのこと。知人のMさん(49才)が、85才の父と81才の母の検診に付き添うため、宮崎県に帰省した。事前に、東京でPCR検査を受けてのことだ。が、それが事を大きくした。