新型コロナウイルス感染拡大によりテレワークが普及し、都会ではなく田舎でリモート勤務するビジネスパーソンが増えている。その影響は、これまで続いてきた「東京一極集中」の傾向にも、大きな変化をもたらしている。こうした流れは今後も続いていくのか。経済アナリストの森永卓郎氏が解説する。
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総務省が2020年10月末に発表した「住民基本台帳人口移動報告」によると、9月の東京都への転入者数は2万7006人だったのに対して転出者数は3万644人で、3638人の転出超過となった。
東京では緊急事態宣言が出ていた5月に、比較可能な2013年7月以降で初めて転出超過となり、6月には転入超過に戻ったものの、その後は7月から9月まで3か月連続で転出超過が続いている。
このデータからは、これまで4半世紀にわたって続いてきた東京一極集中に大きな変化が生じていることが確実にうかがえる。もちろん、新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけになっているのは間違いないとはいえ、問題は、一体なぜ東京から人が出ていくようになったのかということだ。
人口移動をもたらす最大の要因は、何といっても雇用機会だ。全国の有効求人倍率(季節調整値)は、新型コロナの影響により9か月連続で低下を続けており、9月は1.03倍と1倍割れ目前まで下落している。
そのなかで、1年前は全国トップだった東京都の有効求人倍率(就業地別・季節調整値)は、2020年9月には0.89倍と全国で3番目の低さとなっているのだ。東京一極集中は、求人が豊富な東京へ働く場所を求めて全国から人が集まるという構図で進んできた。ところが、コロナ禍で東京の雇用機会は、とてつもない勢いで失われたのだった。
コロナの影響で特に大きな被害を被ったのは、飲食やエンターテインメントなどの「繁華街」のビジネスである。そして、そうしたビジネスが集中しているのが東京なのだから、東京の仕事、求人が急減するのは当然なのだ。