コロナ禍による健康志向の高まりで機能性ヨーグルト商品などが絶好調、明治ホールディングス(HD)の今年4~9月期は、営業利益504億円(前年同期比6%増)となった。「ブルガリアヨーグルト」「ミルクチョコレート」などロングセラー商品を生み出すこだわりを川村和夫社長(67)に訊いた。
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──平成元年(1989年)当時、川村社長はどんな仕事をしていましたか。
川村:私は1976年に明治乳業(現・明治)に入社し、営業部門を経て、1989年は広報室にいました。当時は広報室の所帯が小さく、新商品のリリース原稿作成から決算発表まで、仕事は多岐に及びました。社内を駆けずり回って情報収集する毎日でしたね。
──特に印象に残っている仕事は?
川村:ガット・ウルグアイ・ラウンド(*)への対策ですね。農産物の輸出入自由化交渉は、私たちが扱う乳製品にも大きく影響しました。
【*1986~1993年に行なわれた多角的貿易交渉。WTO(世界貿易機関)の創設などが合意された。日本はコメ市場の開放を迫られ、貿易政策の大きな転換点となった。日本はコメの関税を維持する代わりに、毎年一定量を無税で輸入することを義務づけられた】
自由化で日本の酪農がどんな打撃を受けるのか、競争条件はどう変わるか。その中で当社が生き残るためにどのカテゴリーに選択・集中すべきか真剣に考えました。
ウルグアイ・ラウンドを受けて1990年に策定した中期経営計画では、海外からの輸入がない牛乳やヨーグルトなど冷蔵の乳製品に集中していくことを打ち出しました。この頃に学んだことが、今でも経営判断に大いに役立っています。