多くの人が手軽に利用するようになったネットオークション。しかし、落札したにも関わらず支払いをしないというケースもあるという。もしも、最初から支払う気がなく競りに参加した人が落札した場合、法的にはどういった扱いとなるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に答えるかたちで解説する。
【相談】
将棋の藤井聡太二冠の“封じ手”がチャリティーオークションに出品され、1500万円で落札。競り落とした人物が期日までに支払わないと無効になり、オークション金額に変動があるようですが、もし、購入する気がない人が参加し、高額で落札したのに、お金を払わなかったら、その人は罰せられるのですか。
【回答】
オークションで、最高価で落としながら、代金を払うつもりがなかったのであれば、出品者やオークション業者を騙したことになりますが、遊びで参加しただけでは金銭など財産上の利益が目的ではないため、実際に経済利益を得ることはありえないこともあり、詐欺罪にはなりません。
刑法では、公的な競売や入札の公正を害する行為は3年以下の懲役、または250万円以下の罰金で処罰されます。一方、民間人のオークションは公的な競売ではないので、刑事罰もありません。
しかし、オークション業者は出品物の紹介をし、広く買い手を募り、競り売りでは最高価を誘導するよう購入希望者を競わせる役割も果たします。業者は公正な競り売りができるように準備し、運営する義務を出品者や競り参加者に負っています。ネットではなく、リアルなオークションだと会場を設営する費用も掛かります。最高価で買い受けた人物が代金を支払わず、オークションをやり直せば費用が掛かります。オークション業者にとっては大変な迷惑です。