仮に、次順位の買受申出人が買う決まりになっていたとしても、次順位の買受人は出品者と共謀した競り上げが仕組まれたのではないか、と疑う可能性もあります。その場合、当該業者のオークションは信用を落とし、以後の業務に大きな悪影響が出ると思います。
刑法では、「偽計を用いて」人の業務を妨害すると3年以下の懲役、または50万円以下の罰金で処分されます。なんにせよ、買う意思もないのに、買うと見せかけ競りに参加すると偽計を用いたことに当たり、オークション業者の業務を妨害したことになります。
当該人物がオークション業者に生じる業務上の損失や信用失墜を予想していれば、この偽計業務妨害になる可能性があります。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2020年12月11日号