いまだ世界中を脅かしている新型コロナウイルス感染症の蔓延。通学できないままの大学生も多く、就職率もかなり落ち込んでいる。不測の事態が続く時代に、大学受験におけるブランドや定説が覆されていく──。受験生の“大学選び”も変化してきているようだ。大学ジャーナリストの石渡嶺司さんが言う。
「コロナ不況で親の経済状況もよいとはいえず、奨学金の貸出元が日本育英会から日本学生支援機構に整理統合されたことで、取り立ても厳しくなりました。安易に浪人できないため、“とりあえず入れる大学を”と、自分の実力より少し下の大学を選ぶ受験生が増えているのです。『日東駒専』(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)といった中堅大学が爆発的な人気を集め、驚くほど倍率が上がっています」
学びたい分野の学部・学科があるなら、大学ブランドは二の次なのだ。特に東京都内の大学は定員の厳格化がなされ、学生数が定員を1割以上超えると助成金が打ち切られるようになったため、合格者数を絞り、より「狭き門」になっているのだ。東進ハイスクール広報部長の市村秀二さんも指摘する。
「関西のブランド校である『関関同立』(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)の多くが志願者を減らしている一方、それに続く『産近甲龍』(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)や『摂神追桃』(摂南大学、神戸学院大学、追手門大学、桃山学院大学)がここ数年で出願者数を大きく伸ばしてきている。いまの受験生は、記念受験も背伸び受験もあまりしなくなっています」(市村さん・以下同)
市村さんによれば、今年のセンター試験を受験した浪人生が約10.5万人だったのに対し、来年の共通テストを受ける浪人生は8.5万人。20%近くも減った計算になる。
「今年は受験制度に大きな変動があって対策が難しくなることが予想されたため、浪人生が激減した。過去、最も浪人生が多かったのは1991年。当時は18才人口が多かったうえ入学枠が少なく、浪人するのが当たり前という時代でした」