靴磨きやキャンプ動画で人気を博す芸人たち
無名の若手芸人たちは、この3つ目のジャンルでYouTubeを始めることが多い。しかし、その中でも失敗する人と成功する人がいる。その分かれ目となっているのが「自分が本当に好きなこと」をやっているかどうかだ。失敗している芸人を見ると、趣味・特技系YouTubeを始めるために、無理に趣味や特技を作っている人もいるようだ。そうなると、昔から本気で好きでやっている人と比べると熱量も情報量も違うため、面白さに限界があるのも当然だろう。
バラエティ番組『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「家電芸人」や「ガンダム芸人」など、趣味や得意分野について語る企画で、売れている芸人に混ざって無名の芸人が1人入っていたりするが、ベテランよりも無名が大活躍することがある。この事からも分かるように、自分の本当に好きな趣味・特技ならベテラン・若手に関係なく存在感を示せる可能性があるのだ。
無名芸人がYouTubeを始めてもチャンネル登録者数が100人に満たない場合がほとんどという中、趣味・特技系動画で成功をしているのが、「おっくん」こと奥野奏だ。芸人としては無名に近い存在にもかかわらず、彼の特技である靴磨きを専門としたチャンネル『靴磨き芸人 奥野の『兎にも角にも靴磨き』』は、登録者数は10万人を突破。2016年の開設当時、他に靴磨きに特化した動画が無く、ぼろぼろの靴が新品同様になるなどプロ並みの技術で注目を集め、着々と登録者数を増やしていった。また、もう一つの特技である料理の専門チャンネル『おっくんの宅飲みグルメ』も、有名ラーメン店のラーメンを家で再現をする動画などが人気となり、登録者数は26万人を超えている。
その他、お笑いコンビ「スパローズ」の大和一孝の『大和チャンネル』も健闘している。趣味のキャンプをしているだけの番組だが、キャンプ道具やキャンプ飯の作り方、おじさん達が純粋にキャンプを楽しむ様子などが人気を呼び、チャンネル登録者数は2万8000万人を超えた。また、好きが高じて考案したオリジナルランタンも発売され、こちらも好評を得ているようだ。
ちなみに、ジャンルやテーマが定まっていなければ、チャンネル登録者数が伸び悩むのはベテランも同様だ。ピン芸人・永野の『永野CHANNEL』は、登録者数が7000人と知名度の割に少ない。彼のチャンネルは、ネタ動画でもなく何かに特化したわけでもなく、テーマが定まっていない印象だ。知名度だけで成功できる世界ではないのだ。
チャンネル登録者数が伸びなくても「続けることが成功への道」と言われるYouTube。だが、自分に合っていない、好きでもないジャンルをずっと続けていても成功はしない。自分が何に強い芸人なのかいち早く見極めることが、芸人にとっての生き残りのカギではないだろうか。
■文/矢口渡(芸人ライター)