持ち家の購入は「自宅投資」という考え方
では、持ち家と賃貸、実際にどれくらい差があったのか見てみよう。私たちが運用している「住まいサーフィン」という無料会員制サイトは、25万人の会員がおり、会員は「自宅査定」という機能を使って現在の自宅の取引価格を調べている。その利用回数は13万件を超えており、そのデータから様々なことを読み取ることができる。
まず、持ち家を所有している人の71%、実に7割以上の人の物件の査定価格がこの10年で購入時より値上がりしていることが分かった。その値上がり率の平均は約10%、金額にして620万円だ。多くの人が大体6000万円前後のマンションを購入し、10年後には10%増の600万円前後値上がりしていたことが分かる。10年経過しても買った価格より高く売れるということは、無料で住んだ挙句に、売ったら手元資金が増えるという、願ったり叶ったりの状況を意味している。
この間の住宅ローンの返済は貯金しているようなもの。元本の減少額と値上がり益を合わせると、賃貸に比べて合計2000万円以上資産を増やせる可能性が大きい。売却すれば自己資金が増える人の割合は99%で、ローンの返済額以上に物件価格が下がった人はわずか1%しかいなかった。これがこの10年の実態だ。
これに対して賃貸の場合、家賃として資金は出ていく一方である。前述したように、年間家賃の相場は物件価格の4%なので、6000万円の物件なら年間240万円、10年で2400万円も手元から出ていく計算になる。持ち家なら620万円の利益が出るのに対して、賃貸なら2400万円が出ていくので、その差は3000万円にも膨れ上がるのだ。
加えてこの10年は、住宅ローンを借りているとその残高の1%が所得税から控除される「住宅ローン減税」も利用できた(住宅ローン減税の適用は今年の12月末日入居分まで)。この対象となるのは年間最大40万円なので、4000万円以上の物件価格なら10年で最大400万円が控除される。この減税分も含めて考えると、持ち家と賃貸の過去10年間のお財布事情がいかに異なるかがわかるだろう。