「持ち家」か「賃貸」か、どちらが得かを比較する論争は住居費にまつわる定番のテーマだ。このご時世、住宅ローンという借金を背負うよりは、賃貸に住み続けた方がリスクは少なく済むという見方もあるが、過去10年で見ると、得をしたのは圧倒的に「持ち家」だったという。不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティングを行うスタイルアクト株式会社代表取締役の沖有人氏が解説する。
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「持ち家と賃貸はどっちがお得か?」。この問いの答えが「持ち家」であることは明白だ。少なくともこの10年に限って言えば、その差はあまりにも大きかった。どういうことか。まずは、賃貸がいかに損しているかを説明したい。
最初は賃貸で家を借りるのが当たり前と思うだろうが、賃貸物件を借りる人の多くが、収入の4分の1を家賃として支払っていると言われる。一人あたりの生涯年収が2億~2.5億円ほどと考えると、単純計算でも約4000万~6000万円以上が家賃に消えることになる。
持ち家の場合でも住宅ローンを払い続けるため、月々の出費は賃貸と変わらないと思うかもしれない。だが、持ち家なら売ればお金になるが、賃貸は消費して終わりだ。東京23区の物件価格は毎年約1%ずつ下がるので、家を購入した場合、35 年ローン返済後でも購入価格の65%の資産価値が残る計算だ。また、社会に出てから亡くなるまで大体70年近くある。住宅ローンは最長35年だが、賃貸で家を借りた場合の家賃の支払い期間はこの2倍だ。
さらに、住宅ローンは借入額の3%程度を毎年返済するのに対し、マンションの年間家賃相当額は物件価格の4%ほど。年間家賃の4%を25年払えばその物件価格となるため、ローン返済の方が安く済む計算だ。