コロナ禍で女性の自殺が増えている。警察庁の発表によると、今年10月の自殺者数は2153人と昨年10月に比べ4割も増加した。なかでも女性の自殺は多く、8割以上の増加だという。
背景にあるのは経済的理由だ。総務省の「労働力調査」によると、女性の非正規雇用者は今年9月、1年前より73万人、4.8%減った。女性パートだけで26万人の減少。ただでさえ立場の弱い非正規雇用の女性が職を失い、極めて苦しい状況に追い込まれているのだ。
なかでも「ひとり暮らしの高齢女性」の貧困は深刻だ。高齢者は非正規雇用の割合が高く解雇されやすい。65才以上の女性の完全失業者数は、10月に4万人を記録、1年前より1万人増加した。コロナ禍でそんなニュースを目にする機会が増え、夫との「死別後」や「離婚後」に“生活費の柱”である年金がどうなるのか、不安に感じる女性が増えているという。
遺族厚生年金は上乗せされない
都内に住む50代主婦の早川さんもそのひとり。
「10才ほど上の夫ががんで余命宣告を受け、夫婦でともに過ごせる時間は残り半年ほど……。不幸は重なるもので、このコロナ禍で私がパート先で働けなくなりました。子供はまだ15才で進学も控えているというのに、万が一の場合、この先、女手ひとつで育てていけるか、頭を悩ませています」
早川さんのように夫と死別した妻を支えるのが「遺族年金」だ。「年金博士」ことブレイン社会保険労務士法人の北村庄吾さんが話す。
「夫婦どちらかに先立たれたとき、残された家族の生活を保障するものとして『遺族基礎年金』と『遺族厚生年金』の2つがあります」
まず「遺族基礎年金」は、18才未満の子供のいる配偶者か子供自身が受け取れるもので、“子供の養育の手助け”という意味合いが強い。
「基本額は一律で年間約78万1700円。それに子供の数に応じて加算があります。第2子までは子供1人につき22万4900円、第3子以降は1人7万5000円が加算されます」(北村さん・以下同)