新幹線で「魚」「野菜」を運ぶ
──ウィズコロナ時代の新しい事業は?
深澤:9月から、生鮮食品などを新幹線で運ぶ「新幹線荷物輸送」をスタートさせました。これまでも試験的にやってきましたが、きちんとしたビジネスとしての仕組みづくりに取り組んでいるところです。
新幹線荷物輸送を利用すれば、海産物や野菜などをより早くお客様に届けることができる。最近、私の郷里の北海道・函館から新幹線でイカを運んだのですが、活きたまま東京まで届けることができました。イカは神経質なので、輸送中に死んでしまうケースがほとんどなのですが、振動が少ない新幹線なら負担をかけずに輸送できる。
この特性は、コンピューターの部品のような精密機器の輸送にも役立つと考えています。新幹線だけでなく、中央線や常磐線の特急なども活用し、いずれは物流ビジネスを事業の柱にしていきたいですね。
──コロナ禍でもビジネスチャンスはある、と。
深澤:生活や社会のありかたが大きく変わっていく最中ですが、そうしたパラダイムシフトによって、また新たに生まれるチャンスもあるわけです。
現状は非常に厳しいですが、我々のようなインフラ事業を担う企業には、もともと長期的な視点で社会に貢献する使命があります。国鉄からJRに生まれ変わった時のように、大変革期のいまこそ飛躍を目指していきたいですね。
【プロフィール】
深澤祐二(ふかさわ・ゆうじ)/1954年、北海道生まれ。東京大学法学部卒業後、1978年に日本国有鉄道に入社。1987年、東日本旅客鉄道(JR東日本)発足後、2006年取締役人事部長、JR東日本総合研修センター所長を経て、2008年常務取締役。2012年に代表取締役副社長、2018年4月より現職。
【聞き手】
河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。ジャーナリスト。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
撮影/山崎力夫
※週刊ポスト2020年12月18日号