厚労省の「人口動態統計月報年計(概数)」によれば、全体の離婚件数が減少している中、同居期間20年以上の夫婦のみ離婚件数が増えている(年間約4万件、2019年度)。
長年連れ添った夫婦が離婚する理由は様々だが、もしも離婚協議が始まったならば、早めの決着が望ましい。それは、「婚姻費用(婚費)」が生じるからだ。『マンガで解決!男の離婚』法律監修者で弁護士の澤田直彦氏が指摘する。
「婚姻費用とは、結婚生活を送るために必要な生活費のこと。夫婦は婚姻費用を分割すべきと民法で定められており、収入が多い側は、少ない側へ生活費を渡す必要があります。このため、離婚協議が長引くと夫の負担が増すケースが多い」
フラクタル法律事務所代表の田村勇人弁護士は「婚費地獄に要注意」と指摘する。
「婚姻費用の額は過去の判例などから水準が決まっていて、夫の年収が400万円ほどで妻が専業主婦の場合、夫は妻に月7万円ほどを払うことになります。
その際、妻が早くから離婚を計画し、夫名義の財産を自分名義に替えるなどの謀議をしていると、夫は月7万円を支払い続けるうえ、離婚が成立しないと妻名義に替えられた財産を取り戻せない。協議内容によっては離婚しても取り戻せません。この『婚費地獄』を避けるには、早めの離婚がベター」
婚姻費用を抑えるやり方も知っておきたい。
「別居中に妻が住む家の住宅ローンや家賃を夫が払う場合、一定額が婚姻費用から控除されることが多い。妻が新しい交際相手や子供から生活費を援助される場合も婚姻費用が減額される可能性があるので、離婚協議で主張すること」(田村氏)