年金不安や「老後2000万円問題」など、将来のお金の不安は尽きない。最近ではコロナ不況による収入減が家計を直撃し、副業に活路を見出そうとする人が増えている。
副業仲介サービス最大手のランサーズが登録者(115万人)に実施した調査によると、コロナ禍で「副業を開始した」と回答した人が約3割にものぼったが、うち3割が「本業で管理職などの役職についている」と答えており、副業のすそ野が中高年にも広がっているとみている。同社取締役の曽根秀晶氏が解説する。
「コロナの影響で在宅勤務やリモート会議などが一気に広がり、本来なら5年や10年かけて変わっていく労働環境が、わずか数ヶ月で激変した。普通に家で仕事することが多くなり、今までは概念としてしか理解していなかった『ワークライフバランス』を“自分事”として考える人が多くなった。その結果、副業を始める人が増えたのではないか」(曽根氏)
ワークライフバランスは、「仕事と生活の調和」と訳され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」(内閣府)と定義されている。
国による副業解禁、推進の動きは、この考え方と連動しており、今後、副業が「会社員にとっても当たり前になる」と予測される所以だ。同社の登録者の中にも、副業をきっかけに仕事も人生も大いに飛躍させる例は多数あるという。
「例えば、藤崎勝雄さん(32歳)は6年ほど前に広告代理店に勤めながら副業を開始。終身雇用制度の崩壊や年金支給開始年齢の引き上げなど“将来不安”がきっかけとのことでした。最初は本業の年収600万円に対して副業は20万~30万円。その後、副業の収入だけがどんどん伸び、昨年は遂に1000万円近くに。本業と合わせ、年収は1600万円を超え、開始当初の2.5倍にもなりました」(曽根氏)
「本業の給料を3万円増やすのは大変ですが、副業ならすぐできると思い始めた」(藤崎さん)とのことだが、仕事の内容は本業と同じWebマーケティング。企業の依頼を受け、様々なネット媒体に広告を出す仕事だという。コロナ禍でも副業の月収は順調に増えており、「ワークライフバランス」の実践のためには「副業が不可欠」と感じているそうだ。