居酒屋の小卓でそんな言葉が臆面もなくスルスルと本人の口から出てくるくらいだから、小グラスのビール1杯で、Aくんは相当いい気持ちになったのね。そのうち私以外の2人を「マドンナ」だの「高嶺の花」だのと言って、当時どう思っていたか、積年の思いを繰り返し出したんだわ。
セクハラ? まさか! マドンナのI子も高嶺の花のE美も、もちろん私も、色気の抜けたアラカン同士、笑いながらAくんの“仮面の告白”を聞いていたわよ。
その空気が急に硬くなったのは、最後のお勘定の段。I子の知り合いの女将は「みんな一緒でいい?」と聞く。すかさずI子が「いくら?」と聞き返すと、「まとめて9570円」と女将。すると「あ、おれ」とAくんが言う。続く言葉は当然「払うよ」だと思ったら、「小ビール1杯と鶏唐揚げと、あとサラダ」だって。「えっ?」と女将が聞き返したら、「おれ、小グラス1」と念押しまでしている。
要は、食べた分は自分で払えってことよ。それだけじゃない。お酒を飲まないI子が車で来ていると知ると、「じゃ、○駅まで乗っけて。いいよね?」って、後ろのドアから乗り込んじゃったのよ。
「同い年だから、おごったら失礼ってこと?」「それにしてもひとり大はしゃぎだったよね」「男だから払えと言っているんじゃない。飲む席で男風を吹かせたなら、その役割を全うしろと言いたいのよ」と、後日、女3人はグループLINEで文句たらたらよ。
そうそう。世の中、バランスが大事なんだって。大騒ぎになった渡部某だってそう。あの会見の後味が悪かったのは、彼がしたことをリポーターが“正義”で裁こうとしたことよ。そこに無理があるから、話はいつまでたっても堂々巡り。そうではなく、有名人風を吹かせて若い女子を合意の下とはいえ、ひととき自由にしようとするなら、それなりの対価を払わないと。“適正価格”はわからないけど、失礼のない“ひととき代”ってあるんじゃないの?と私は思うんだわ。そうした失礼のない渡し方をした有名人をマスコミに売った女を私は知らないね。