菅義偉首相のブレーンである内閣官房参与の高橋洋一・嘉悦大学教授が提起した大胆なNHK改革案が話題を呼んでいる。本誌・週刊ポスト12月11日号掲載の「NHKは『Eテレ売却』で受信料を半額にできる!」に対しては、NHK関係者にとどまらず、各界の識者から賛否両論の議論が巻き起こっている。
経済アナリストの森永卓郎氏は「たしかに、受信料制度は時代遅れだと思います」と語るが、求められる改革は“公平性”に主眼を置くべきだとして、こう続ける。
「いまの受信料制度は、テレビの受像機がお金持ちのものだった時代に作られた仕組みです。テレビを持っているのはお金持ちだけ、あるいは“テレビが一家に1台”という時代は終わりました。私は自宅、仕事場、趣味の部屋の3か所で受信料を払っていますが、若者を中心にテレビがあっても支払わない人たちがいる。その不公平を解消するには、受信料として必要な額を税金として徴収して、一般会計からNHKの制作予算を拠出するのがいいのではないか。議論すべきは、どういう仕組みなら公平な負担になるか、というポイントではないでしょうか」(森永氏)
高橋氏は〈NHKが経営資源を無駄にしているのがEテレ〉〈全国放送で広い周波数帯を使い、同じ時間帯に原則1番組しか放送できないのに、視聴率が低い。電波という公共資源が有効活用されていない〉〈Eテレのチャンネル(周波数帯)を売却して携帯(通信)用に利用すれば、通話だけではなく、もっと多種多様の映像コンテンツを同時に配信できる〉といった改革案を展開している。
こうした意見に対し、森永氏は「民放でできることは民放にという考え方なのでしょうが、それは違うのではないか」と語り、こう続ける。
「テレビ放送が全局映るというのは東京や大阪にいると当たり前に感じますが、全国レベルではそんなことありません。一部には衛星放送しか映らないような難視聴地域もある。そういう地域の人たちがいることを考えれば、“NHKは災害報道だけでいい”“娯楽番組はいらない”という話にはならないはずです。
バラエティ番組にしても、NHKが作っているものと民放が作っているものは、全然違うと思っています。民放の最大のネックはスポンサーを気にしなければいけないことです。NHKはそれがないので番組を自由に作れる。その違いは大きいと思います。“すべて民間でやればいい”というのは大都市の上から目線のように思えてなりません」(森永氏)
NHKの在り方、受信料制度の在り方について、議論はまだまだ広がりそうだ。