ホテルの客室のテレビの受信料を巡ってNHKと東横インが争っていた裁判で、最高裁は東横インの上告を退け、およそ19億円の支払いを命じる2審判決が確定した。受信料を巡っては様々なケースの裁判があり、カーナビにも支払いを命じる判決が出たこともあるが、どういった法的根拠があるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
今年5月、東京地裁は『自宅にテレビを持たず、受信機は車のカーナビのみ』という原告に対し、NHKの受信料を払いなさい、との判決を出しました。この判決に納得がいきません。家のテレビで視聴するNHKには受信料を払うべきですが、カーナビにまで契約を求めるのは、やり過ぎではないでしょうか。
【回答】
地上デジタル放送用に割り当てられた周波数帯を13分割し、そのうちの一つであるワンセグ(ワンセグメント)を使い、地上デジタル放送を送信するのがワンセグ送信です。受信機で地上デジタル放送を見ることができ、出先でもテレビ番組を見ることができます。
放送法では、NHKが公共の福祉のための放送ができるよう広く国民に負担を求めています。具体的には、【1】/NHK放送を受信できる受信設備を設置したものは、NHKと受信契約を締結する義務があります。【2】/ただし、放送の受信を目的としない受信設備であれば、義務はありません──など。
この裁判で原告は「設置」とは、一定の場所に置くことであるとした上で、それは自宅の車庫だが、そこではNHKの地デジ放送が受信できないから【1】の要件はないし、カーナビ目的で買ったものだから、【2】の受信目的もないと主張、受信契約の締結義務がないことの確認を求めました。