こうした暗い社会経済情勢の中、国民の不満や不安を和らげるために、政府はどうするか?
100年前は、インフレから世界恐慌、震災被害、企業の倒産と農村の窮乏が深刻化し、失業の山になった。その結果、政府は雇用を創出するために国債を刷りまくって公共事業を拡大。さらに満州事変(1931年)以降、軍部主導の「産学官連携」による軍需産業の拡大に傾斜していった。
今の政府も、税収を超える国債を発行して、「国土強靭化」という名の公共事業や、「なんちゃってデジタル化」を推し進めようとしているが、その“迷走”の行き着く先は、かつてと同じ財政悪化と金融の混乱だろう。また、政府主導の産学連携も推し進めており、このまま放っておくと、100年前の「いつか来た道」に進みかねない。
私たちは100年前の教訓をもう一度振り返り、日々のニュースや株価などに左右されず、政府が「いつか来た道」へと向かわないように監視しなければならない。それが2021年の行方を見極める重要な視座である。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は『日本の論点2021~22』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』等、著書多数。
※週刊ポスト2021年1月1・8日号